モンゴル遊牧民と肉
モンゴル遊牧民と肉
遊牧民が肉といえば、羊肉のことを指します。状況によりますが、大切な来客に対してはおもてなしとして羊肉料理を出します。
私たち日本人が羊肉を食べると言えば、鉄鍋で焼いて食べるジンギスカン料理を思い浮かべますが、実際にはモンゴルにこのような料理はありません。
モンゴル遊牧民が肉を食べるときは、「煮る」が基本です。あとは「炙る(あぶる)」、「焼き石を鍋に入れる(=ホルホッグ)」、といような料理方法をします。
運良く(?)、ヒツジさんを屠るところから見れました(ヒツジさんありがとう、ごめんなさい)。遊牧民は家畜を屠るときは、血を一滴も大地に落とさないようにします。伝統的に、動物の血液で大地が汚れるのを良しとしないからです。
さらに、こうも言っていました。屠るときは、決して苦しませず、楽に逝かせなければならない。苦しませずに屠れば、同時に肉も不味くならない、だそうです。
解体は約40分で終わりました。まずは血を取り出し(かなりの量だった)、これを後で腸の一部に詰めて、他の内臓と一緒に煮込みます。腸の最終部は便がたまっていますので、便を取り出し、よく洗います。
内臓を煮込んでる間、骨つき肉と筋肉部はゲルの中で夜まで干していました。また、煮込むのに時間がかかりますので、その間レバーの一部は脂身でぐるっと巻いて、そのまま火の中に入れ、炙ります。脂身が焦げる手前に火の中から外に出し、その場でナイフで切って、みんなで手づかみで食べました。
これがとっても美味しくみんなパクパク食べました。
いよいよ内臓が煮込み終わると、これらをボールに入れ、テーブルの上において、ナイフで切りながら手で食べます。私が訪問した遊牧民のところでは、とにかく取り皿は出ず、ほとんど手づかみでみんなで回しながら食べていました。(スープのときにはスプーンやフォークが出ます。)
内臓煮込みにはすべての臓器が入っており、どれもクセなく美味しかったです。血を煮込むと固形になるのですが、これもほんと美味しい。中でも、意外と美味しかったのが、腸です。なぜならハーブの香りがしたからです。もちろんこれはハーブではなく、ヒツジが食べた草です。つまり便です(笑)。しかし、便と言っても発酵されており、これが上手くハーブとしてハマっていました。本当に美味しい。加熱もしっかりしていますので細菌による心配はありませんでした。
残りは、今後使用する油脂として残したり、肉も何日かかけて食べるか、保存加工します。冷蔵庫がないのですが、涼しく乾燥していますので、割と保存できるようでした。
実は最終日は肉やチーズに飽きてしまい、正直見るのも嫌だったのですが(笑)、はじめてこれらの肉料理を食べたときの感動と美味しさは今でも印象的です。
※頭部も足もすべて食べます。毛皮は都市部に売るそうです。