亜鉛とアトピー
アトピーの原因の一つに亜鉛不足があります。乳幼児の亜鉛欠乏はお母さんの母乳が低亜鉛状態であることが原因であったり、成人の亜鉛欠乏は食事によるミネラル摂取不足などが原因です。
亜鉛は300種類以上の酵素が働くときに関与している補因子であり、これが欠乏すると酵素の働きがうまくいきません。
例えば、抗炎症作用を発揮するオメガ3系の脂質代謝において、亜鉛が不足しているとアトピーを抑えるプロスタグランジン(3)が産生されません。α-リノレン酸からEPAに代謝されるには、デルタ-6-デサチュラーゼやデルタ-5-デサチュラーゼという酵素が必要ですが、これらは亜鉛がないと活性化しません(Lipids.1982 Mar;17(3):129-35)。ちなみにこのデサチュラーゼの活性には、亜鉛以外にマグネシウム、ナイアシン、ビタミンB6、ビタミンCの補因子が必要です。
また、亜鉛はタンパク質の分解酵素(胃酸やプロテアーゼなど)を生成・分泌するのに不可欠なため、不足してしまうとタンパク質の未消化物が残ってしまい、アレルギー反応を起こしてしまいます。
同時に白血球による活性酸素の大量発生により、炎症が持続してしまうわけですが、これを消去するSOD酵素にも亜鉛は重要な因子として関与しています(細胞質のZn-SOD)。
亜鉛には腸の内壁を正常化にする働きがあります。アトピーの多く人が腸の状態が悪く、ミネラルの吸収が悪いわけですが、亜鉛を多く投与するごとに、それだけ吸収率が上がり、効果が表れます。これは亜鉛の持続的な多量摂取により、腸の粘膜の再生力が向上し、炎症も低下したことで吸収率が上昇したことが考えられます。
他にも亜鉛欠乏はさまざまなところで生体に関与しています(ホルモン代謝など)。亜鉛摂取はアトピーに対する栄養療法の一つとして、非常に重要な因子であると考えられます。
※治癒目的の亜鉛過剰摂取は、必ず銅の摂取も考慮しましょう