小腸とグルタミンとグルタミン酸
酸大腸を動かすエネルギー源は基本的にブドウ糖ではありません。大腸の腸粘膜の主なエネルギーは、腸内細菌が生成する短鎖脂肪酸です。さらにミトコンドリア系を稼働させ、解糖系にはあまり働きません。
では、同じ腸でも小腸の方はどうでしょう。
小腸の腸粘膜のエネルギーはタンパク質から分解されたグルタミンというアミノ酸(の一種)が主なエネルギー源です。グルタミンは実際には遊離アミノ酸として血中に多く含まれています。
実は、大腸のエネルギー源も短鎖脂肪酸以外に、少量ですがこのグルタミンを使用します。
グルタミンは基本的に体内で合成されるために必須アミノ酸とは違いますが、ストレスにさらされたり、絶食したり、病気になると、大量に消費されるために、やはり普段の食事で補っておくのがいいかもしれません。よって、グルタミンは条件つきの必須アミノ酸などと呼ばれています。
そもそも、なぜ、大腸は短鎖脂肪酸という脂質を主なエネルギー源にするのに、小腸はグルタミンというアミノ酸様物質をエネルギーにするのでしょう。
なぜなら、小腸が脂質や糖質をメインに吸収するからです。もし、小腸自身が脂質や糖質をエネルギーに使用していたら、吸収できなくなるからです。もちろんアミノ酸も吸収しますが、必須アミノ酸ではないグルタミンを使用すれば体内で合成できるので、体内のタンパク質がそう枯渇することはありません。人間の体ってよく出来ていますね。
もう一つの理由として、小腸には生体の8割の免疫機構が集結しており、これらが働くにはグルタミンが必要だからです。グルタミンが不足すれば、免疫は低下します。
ちなみに、グルタミンはグルタミン酸とは異なるものです。同じアミノ酸の仲間ですが、グルタミン酸はグルタミンよりもアミノ基が一つ少ない特徴をもっています。
興味深いことに、小腸の粘膜はグルタミンだけでなく、このグルタミン酸もエネルギー源として大量に使用することがわかっています。タンパク質食品はもちろんのこと、日本人の好きなおだし汁を日頃から飲んだり、昆布や野菜に多く含まれるグルタミン酸もきちんと摂取すれば消化管のエネルギー不足に陥ることはそうないでしょう。
※小腸のエネルギーは、グルタミンが約6割、ケトン体が約2割、ブドウ糖が約1割使われています。